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【電竜戦】人間・AIタッグの戦略性と将来性

世界将棋AI 電竜戦とは?

電竜戦とは、コンピュータと人間が参加できるオンラインの将棋大会です。『世界将棋AI』という名称からは、コンピュータだけが対戦するように思えますが、人間も参加できるところが面白いところです

つまり、人間とコンピュータの対戦も行われるわけです

詳しくは、以下の動画をご視聴ください!

本大会に参加していたソフトは、人間の初心者~トップ棋士を超えるレベルまで幅広く揃っていました。特に、上位陣はレートに換算するとR4000を超えているので、人間では歯が立ちません。人間のトップはせいぜいR3000程度になります。

そこで、本大会では、新しい参加形式である『人間・AIタッグ』が設けられていました。この言葉、チェスでも聞いたことありませんか?人間とAIが協力することによって、お互いの弱点を補完し合える可能性があります。

例えば、電王戦の阿久津主税八段vsAWAKEのでは、ハメ手であっさり終局しました。純粋な実力勝負では人間が負けてしまうものの、人間はソフトの弱点を突くことができます。その後にソフトにバトンタッチして勝ち切るという構図が、人間・AIタッグの理想的な戦略でしょう。それを考慮した戦略が以降に出てきますので、読み続けてください!

人間・AIタッグの戦い方

人間・AIタッグとは、人間が将棋ソフトの手を参考にしながら対局するということです。俗に言う、〇〇〇指しですね…笑。

例えば、将棋ウォーズは基本的に人間が対局しますが、棋神ボタンを押せば、5手だけコンピュータが自動で指してくれますよね?それと同様に、いつでも将棋ソフトの力を借りることができるのです。

とはいえ、「対局における着手」と「ソフトで検討する操作」は対局者が手動で行うので、決して楽ではありません。さらに、本大会では、「持ち時間が10分・1手指す毎に2秒追加」というフィッシャールールが採用されていたので、ソフトの手を参考にしすぎると時間が大幅に減っていきます。

そこで、正確性と速度のバランスを考える必要があります。どこまで人間が指して、どこからソフトにバトンタッチするのか。途中からは、単純にソフトに丸投げしてしまうのか。これに関して、人間・AIタッグでの戦い方をまとめました。

①局面ファイルの準備

ソフトがよく指す戦型の、局面ファイルを作っておきます。

これにより、ソフトへのバトンタッチの時間を短縮することができます今回の電竜戦では、相掛かり角換わり腰掛け銀が多かったので、それらの局面ファイルを準備しておきました。局面ファイルのおかげで、定跡を離れたところで即座に現局面を編集することができます。

②序盤は自力でノータイム指し

序盤では、人間がノータイムで指します。

フィッシャールールでは、ノータイムで指していれば持ち時間を増やすことができます例えば、相掛かりでは、お互い飛車先を交換して中住まいに組むまでは自力で指して、2秒ずつ稼いでいました。この時間の貯金が、ソフトの思考時間に使えるわけです。

相手のソフトも定跡ファイルがあるので、ノータイムで指してきます。途中で少考してきたときは、その間に将棋ソフトで現局面を編集していました。

③分岐点でソフトを起動

手の広い局面で、ソフトを起動します。

難しい局面こそ、ソフトの力を借りて正確性の高い手を指します手の広い局面で人間が指すと形勢を損ねやすく、対ソフトだと完膚なきまで咎められます。序盤の構想であっても自力では作戦負けを招くことがあるので、時間の貯金をソフトの思考に投入します。

具体的な操作

ソフトの力を借りたい場面で、将棋ソフトで現局面を編集します。このとき、事前に準備した局面ファイルを開くことができれば、時間が短縮できます少し違っていれば編集できますし、特殊戦型の場合は初形から編集していました。

④ソフトを起動してから

候補手評価値を見て、指し手を決めるは人間です。

まず、将棋ソフトに欠かせない候補手評価値について簡単に記します。

候補手・・・ソフトが推奨する手で、最善手から最大10手まで表示させられる
・評価値・・・形勢を表す数値で、-9999(後手勝ち)から+9999(先手勝ち)の範囲で示される

「この手を指せば、形勢はこんなもんです」とソフトがアドバイスをくれる感じです。

評価値が最も高くなる候補手を、最善手として表示します。

ただし、時間をかけるほどノード数(ソフトの計算量)が増えていき、最善手が正確になっていきます

とはいえ、今回は短時間のフィッシャールールですので、研究のように深く読ませるわけにはいきません。

変化が複雑だったり、一直線の変化がある局面では、時間をかけて深く読ませ、キリのいいところで人間が決断します。

ここが、人間・AIタッグの最も難しいところで、棋力も必要になってきます。

⑤必然手は自力でノータイム指し

これしかない、という局面は人間がノータイムで指します。

序盤と同様に、無駄にソフトに頼ると時間を失います。ソフト起動後も2秒貯金を積み重ねていけば、終盤の難所でのリターンが大きくなります。逆に、残り時間わずかで終盤を迎えてしまうと、人間がかなり厳しいです。

・簡単な局面では、人間のノータイム指しで時間を貯金していく
・難しい局面では、時間の貯金を使ってソフトに深く読ませる

この2つが、フィッシャールールにおける人間・AIタッグの基本的な戦略となります。

予行演習での戦い

電竜戦には、予行演習1〜4の催しがありました。僕自身は、予行演習3・4に人間・AIタッグで参加して練習をしていました。

それが、過酷な戦いだったのです。

・持ち時間はフィッシャールールの5分+2秒
・総当たりなので、対局数が30局以上
・予行演習3は20時から翌朝の8時まで12時間の徹夜
・予行演習4は20時から翌日の14時まで18時間の徹夜

こんなのやってられますか?僕は全局指し、しかも勝率は五分五分だったのです。

人間・AIタッグでどのように戦ったのか。その戦略が最大限に生かされた対局をYouTubeで解説しているので、ぜひご視聴ください。先述のようなハメ手も出てきますよ!

2020年世界コンピュータ将棋オンライン大会で優勝した水匠との対戦も解説しています。

人間・AIタッグの戦略と徹夜で指し続けるメンタルがTwitterで話題になり、電竜戦の主催者であるカツ丼さんの記事にも取り上げられました。

電竜戦のブログ

電竜戦本戦での戦い

電竜戦本戦は二日制で行われました。予行演習のような徹夜ではなく、朝から晩までの開催でした。自身は人間・AIタッグということで、水匠と組みました。

初日は10局行い、成績に応じてA級(10位まで)とB級(11位以降)にクラス分けされます。そして、二日目は各クラスで9局行い、最終的に順位が決まります。

唯一の人間・AIタッグ、ほっしー&水匠の結果は?

初日は5勝5敗で、B級にクラス分けされました(初日の対戦表)。初戦でQhapaqという振り飛車ソフトに完敗でしたが、後半で盛り返しました。

そして、二日目はB級で7勝2敗という好成績で7位に終わりました(B級対戦表)。

 

 

開幕から5連勝スタートとなり、暫定1位に輝きました。しかし、同じく5連勝しているソフトは強豪揃いです。

6回戦の相手は・・・

 

 

 

 

 

 

W@nderERと対戦しましたが、結果は敗北でした(棋譜)。本局は、人間・AIタッグの戦い方における課題を感じさせられました。

評価値の変動

W@nderERとの対局は、人間・AIタッグの反省材料になりました。下図は序盤が千日手模様になり、検討モードで放置していると、15歩が+200と示しました。

千日手にする選択肢もありましたが、評価値を信じて仕掛けました。以降、どんどん評価値が上がっていくも、途中で互角に戻り、押し切られて負けてしまいました。棋譜ページW@nderERの評価値推移を見ると・・・

対局中の水匠の評価値と全然違う・・・

評価値はソフトの種類やエンジン設定、思考時間によって変わってきます。正しい評価値なんて人間には分かりませんし、ソフトの最善手が正しいとも限りません。藤井聡太二冠はソフト超えの手を指すとも言われるように、評価値はほんとに謎で、将棋の奥深さを感じさせます。

そして、W@nderERが終盤で神の一手を放ちました。問題図はこちら。

解答・解説が気になる方は、YouTubeで!

敗戦の分析

敗戦は、いずれも上位陣のソフトにしっかり負かされました。こちらはソフトの最善を指し続けているのに、評価値が少しずつ下がっていったり、突然ガクンと下がったりしていました。

後から棋譜ページで評価値推移を確認すると、こちらの評価値と食い違っていたのです。負けたのだから、こちらの評価値が不正確だったのでしょうか。

問題は検討モードでの思考時間かと考えています。時間を残して負けることが多かったので、もっと深く読ませる必要があったのかと思いました。

人間・AIタッグは流行する?

身近な人間・AIタッグ

今回の電竜戦では、唯一の人間・AIタッグとして参加しました。この参加形式は画期的で、戦略についても奥深いものでした。

人間・AIタッグは今後、流行するのか?

「ソフト指しは悪だ!」とか、「未来の戦い方だ!」とか言っている人たち。将棋ウォーズで棋神を使ったことはありますよね?

あれも立派な人間・AIタッグなのです。3切れはまさにそれで、決まったところは人間が早指し、難しいところであのボタンを押すことで、強力なプレイヤーになれます。

もちろん、駒を全く動かさない棋神厨は時間切れで負けますし、人力のみではせいぜい七段で止まってしまうことでしょう。

短時間の将棋では、人間とAIが補完し合う必要があり、面白いゲームとなります。電竜戦はフィッシャルールでしたので、「時間の貯金」からの「ソフトの深読み」というテクニックがあり、戦略の奥深さを感じました。

ソフト指しは見極められない

いかなる技術も悪用されることは不可避です。将棋ソフトにもそのような一面があり、俗に言うソフト指しが絶滅しません。

ネット将棋ではソフト指しが横行しており、リアルの対局でもそのような事例があります。プロの将棋界でも大きなスキャンダルがあったりと、物的証拠がないために裁くのは非常に困難です。

現状では、ソフトの指し手との一致率で判定するのですが、ソフトの研究が再現されたり、短手数で一直線の将棋であれば、一致率は必然的に高くなります。逆に、部分的にソフトを使えば一致率もそれほど高くなりません。したがって、一致率によるソフト指しの判定は非常に困難です

ソフト指しは、冤罪も野放しもあり得るのです。

そして、強ければマナーが備わっていてソフトを使わないとも言い切れません。チェスのグランドマスターや、韓国の囲碁棋士もAIを不正使用した事例があります。誰だって、ソフト指しに手を染めてしまう可能性があるのです。

最近は、コロナの影響により、将棋の大会をオンラインで開催する傾向にあります。スポーツと違って、オンラインで代替が利くのは将棋の素晴らしいところなのですが、ソフト指しの懸念が生まれます。たとえ、棋譜の一致率を調べたところで、ソフト指しを100%正確に判定することはできません。

ビデオ通話画面共有手元撮影が健全か?

いや、それでもできちゃいます(悪質なのでここでは言いません)。

ソフト指しはネットに限らず、リアルでも可能な行為であり、事例もあるわけです。それに、ソフトの研究手順が再現されたり、短手数で一直線に勝てた場合は、一致率は途轍もなく高くなります。

僕自身も、リアルの大会で一致率が80%を超えた経験があります。そして、その将棋は研究ではなく、その場で考えた光速の寄せでした。離席していたら疑われたかも?笑

人間・AIタッグ大会こそ健全

もう、人間・AIタッグの大会があってもいいんじゃないかと思います。将棋ウォーズも棋神を使えば健全な人間・AIタッグですが、棋神を使わないソフト指しが常に存在しています。

それに比べて、電竜戦の人間・AIタッグは健全すぎます笑。

フィッシャーのような短時間の将棋でソフト指しを許容にすれば、棋力の他にし、そして、不正のしようがないので、疑惑のない健全な勝負ができるのではないでしょうか?

それに、棋力だけでなくソフトを使いこなす力も必要になってくるので、幅広い棋力層が楽しめるのではないでしょうか?

将棋に限らず、プレイヤーがAIを活用ことは禁止するのではなく、むしろ促進されるべきではないでしょうか?ポケモンバトルだって、ダメージ計算機を使うことはバレようがないので禁止されていませんし、ガチな人は使ってます。

人間とAIが相互補完することをゲームで実践していくようになれば、生活と仕事におけるAIとの共存に関するヒントが得られるのではないでしょうか?

将棋ソフトを活用して強くなろう!

僕自身は、将棋の勉強にAIを導入することによって、実績を大きく伸ばすことができました(大会の対局中には使ってません笑)。

今や、序盤研究や棋譜解析でソフトを使うことは当たり前のようになっています。人間が行うよりも遥かに正確で速いので、将棋の学習において生産性が高いことは言うまでもありません。トップ棋士の藤井二冠や豊島竜王はバリバリ使ってます。ただ、初級者は基礎を学んでからにしましょう。

プログラミングやITの知識がなくても、将棋ソフトを最低限、使いこなすことは難しくありません。これから将棋ソフトを使って勉強したい方は、我がYoutubeの再生リスト『将棋ソフトの有効活用』をご視聴ください。スマホだけでも簡単にできますよ!

そして、序盤研究も高いクオリティのものができます。興味のある方は、再生リスト『序盤ソフト研究』をご視聴ください。内容は高度で、大学将棋部や企業将棋部から高い評価を頂いております。

最後までご精読ありがとうございました!

【将棋研究】YouTube『序盤ソフト研究』の戦法リスト

序盤ソフト研究をリスト化

元奨ほっしーの将棋チャンネルでおなじみの、序盤ソフト研究をリスト化!

流行戦法からマイナー戦法の対策までそろっています。

各戦法の解説動画おすすめの関連書籍を見ることができます。

 

解説動画

YouTubeで各戦法の研究を10分程度で解説しています。

 

おすすめの関連書籍

各戦法のおすすめ棋書を紹介しています。楽天Amazonから購入できるようになっています。

 

【居飛車編】

角換わり4八金・2九飛型 4二玉に4五桂角換わり4八金・2九飛型 4二玉に8八玉角換わり4八金・2九飛型 6六歩に7二金角換わり4五桂速攻対策角換わり棒銀後手6四歩角換わり棒銀後手7四歩角換わり相早繰り銀角換わり 対右玉地下鉄飛車
相掛かり中原流相掛かり棒銀
ひねり飛車対策
脇システム 6四角に同歩
脇システム 6四角に同銀矢倉6七金左戦法先手番米長流急戦矢倉雁木対策 超速
相横歩取り横歩取り4五角戦法嬉野流対策
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【振り飛車編】

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